「民事調停」裁判所広報を見る。【シリーズ13】

訴訟と並ぶ紛争解決手続の一つ。

 裁判所には,民事に関する紛争の代表的な解決方法として,民事訴訟民事調停の二つがあります。
 訴訟は,裁判官が双方の言い分を聴き,証拠を調べた上で,法律に照らしてどちらの言い分が正しいかを決める制度ですが,

調停は,当事者同士の合意によって紛争の解決を図ることを目的とするもので,裁判外紛争解決手続ADR)の一つです。

民事調停は,借金の催促や家屋の明渡しなどの身近な紛争をはじめとして,幅広く利用することができます
(債務の弁済が困難となった場合に,経済的再生のために申し立てる『特定調停』という制度もあります)。

紛争の円満な解決を目的

 民事調停は,あくまでも当事者同士が話し合い,お互いが譲り合って解決することを目的としています。

 必ずしも法律にしばられず,実情に合った円満な解決を図ることができます。

 相手と話し合うことなく,いきなり訴訟を提起すると,かえって紛争がこじれてしまったり,また,裁判までして相手と争うのはどうかとためらわれる方も多いと思いますが,このような時に,まずは調停を試みて相手と話し合ってみることにより,早期に妥当な解決へとつながる場合もあることになります。

手続は簡単・非公開,だから安心

 民事調停は,通常,簡易裁判所で行われます。

 窓口には,民事調停に関する各種リーフレットのほか,よくあるトラブルのパターンに応じた定型申立書が備え付けられ,手続や申立書の記載方法に関する説明も行われていますので,法律に詳しくない方にも利用しやすいものとなっています。

 また,手続は非公開で行われるので,他人には知られたくないような場合でも安心して事情を話すことができます。

 解決までに要する期間も比較的短く,申立手数料も訴訟に比べて安くなっています。

図版:民事調停の流れ

合意には判決と同じ効力

 話合いによって当事者間に合意ができ,調停が成立すると,その合意は訴訟の場合の判決と同じ効力を持つことになります。また,合意による解決であることから,相手方の任意の履行が期待できるというメリットもあります。
 ただし,一方の当事者が解決案にどうしても納得(同意)できなければ,調停は不成立となることもあります。その場合には,もちろん訴訟手続での解決を求めることも可能です。

民事調停を支える人たち ~調停委員~

豊富な知識経験をもとに,紛争を解決へと導きます

民事調停は,裁判官1名と調停委員2名以上とで構成される調停委員会によって手続が進められます。この調停委員会の中心的存在である調停委員は,民間から選ばれた良識のある人達が担っています。紛争の解決にあたっては,様々な法律問題等に対応していく必要があるため,調停委員には幅広い知識や経験が必要とされています。また,例えば建築や医学といった専門分野に関する紛争では,こうした専門的知識を有する調停委員が専門家として意見を述べることもあります。
調停委員は,公正中立を旨とし,当事者を平等に扱い,双方の言い分を十分に聴き,お互いの歩み寄りを助け,そして合意に導くという重要な役割を担っているのです。

民事調停についてさらに詳しくお知りになりたい方は,裁判所のウェブサイトの「裁判手続の案内>裁判所が扱う事件>民事事件>簡易裁判所における民事事件>民事調停」をご覧いただくか,最寄りの簡易裁判所にお問い合わせください。簡易裁判所の窓口には,民事調停に関する各種リーフレットや申立書のひな型が備え付けられていますので,どうぞご利用ください。

         

 裁判所・広報から転載